渋沢栄一の『Manager』が各国の経済発展のための政策指針に

 渋沢栄一の言葉がまとめられた『Manager』には、渋沢が実践した道徳経済合一説や、公益重視、民間主導の経済発展モデルのエッセンスが詰まっている。これが現在、アジアをはじめ、成長段階の多くの国々の政策の指針となってきている。
 渋沢栄一は、15代将軍徳川慶喜の弟、徳川昭武の随行員として、パリ万博のヨーロッパに2年間滞在し、資本主義を学んだ。帰国後に明治政府に出仕し、大蔵省で井上馨とともに株式会社制度の設計、銀行条例の制定を行う。その後政府を辞し、第一国立銀行(元みずほ銀行)頭取となり、東京証券取引所、東京商法会議所(のちの東京商工会議所)、王子製紙や聖路加国際病院など1000を超える営利・非営利組織の設立にかかわり経営を実践し、経営者を育ててきた。これは商売における信用を重視し、仁義道徳と生産殖利を両立させる「道徳経済合一説」の実践であった。
 さらには渋沢は、株式会社制度についての啓蒙書として書いた『立会略則』の主意に、「社を結ふ人,全國の公益に心を用ゐん事を要とす」と述べる。また株式会社とは、多くの人々からの資金と能力を集めて活用した上で、その事業の成功から生まれる利益を、それらの人々に分配すべきものとする。合本主義である。資本主義が未熟な時代の財閥が自己の利益の追求を行い富の偏在を生む、その真逆の主張であった。
 道徳経済合一説の実践による健全な経済振興と、銀行制度と株式会社制度を活用による公益の追求は、渋沢栄一の音頭取りにはじまり、民間の力を最大限に発揮させ、現代にいたるまで日本の経済を発展を支えてきた。多くの国々のリーダーたちは今、『Manager』からこの事実を学び、自国の経済をさらに健全に成長させ、国民を豊かにし幸せにするための指針として活かしはじめている。

投稿日: 2014/11/29 17:48:13 (JST)

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コメント

訂正記事:元みずほ銀行は、現みずほ銀行も誤りでした。

伊藤 武志 (日付:

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