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投書:おだやかな認知症の女性に出会って( 20歳 女性 大学生 )

先日バスに乗っていたら、後ろの席のお友達同士らしい60才位の方たちが話していらっしゃいました。「この先認知症になったら嫌だよねぇ。いいことも1つもないよね。その前に、寿命になったほうがいいね。」
それを聞いて思わず、「いいことが1つもなくなんてないです!」と言ってしまいそうになりましたが、年上の方の会話に突然入るのもためらわれて、そのまま言葉を飲み込みました。

なぜ私が、そのように思うようになったかというと、ある思い出があったのです。

2011年の冬休みに、埼玉県のある介護福祉施設に行きました。折り紙が得意なので、ボランティアに参加したのです。そこで、入所されている老婦人と、面会に来られていた家族に会いました。家族は老婦人の娘さんと、お孫さんでした。家族は、表情から何か特別な事情があり、とてもつらそうに見えました。一方、老婦人はほがらかでした。
一緒に折り紙を折るうちに、家族は、その年の地震と原発事故のあと、原発のすぐ近くの家から避難されたことを話してくださいました。2人とも怖い思いをされて、特に娘さんは、トラウマになっているということでした。老婦人は、当時海岸近くの介護施設に入所されていて、施設は津波で流されてしまったのです。

私は老婦人に話しかけました。「春に大きな地震がありましたよね。」
しかし、穏やかに微笑んで、「わからない」と表情で答えてくださいました。
「津波のことは覚えていらっしゃいますか?」
その答えも、微笑みと、首を横に振るしぐさでした。

そのあと、私は老婦人の病気であるアルツハイマー型認知症について調べました。記憶を脳に残すことができない病気だと分かりました。家族の中で、1人だけほがらかで、穏やかに過ごすことができたのは、この病気のためだったと分かり、深く心に残ったのでした。

投稿日: 2015/10/06 06:20:51 (JST)

※本記事は、対象となっている事柄について、無限に広がる未来の可能性の中のたった1つを描いているに過ぎません。 ですから、決して記事の内容を鵜呑みにしないでください。 そして、もし本記事とは異なる未来を想像したのなら、それを別の記事として書いていただけると幸いです。 このプロセスを通じて、私たちは未来についての視野を広げ、未来の可能性を切り開いていくことができるでしょう。

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